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#毎日古典 #孫子 その1 計編

 4月から新企画を始めました。名付けて #毎日古典 !

 

 

ルール1:平日の朝8時を目安に1日1項を更新する。

ルール2:極力1ツイートに収める。

ルール3:無理をしない。

 

 この3つのマイルールを中心に古典や名著と呼ばれる本を読み進めていこうという企画です。

 もともと本を読むのは好きな方なのですが、時間が経つと内容を忘れてしまうこともしばしば。とはいえただ自分用のノートにまとめるのも味気ないので、こうして共有しようと思い至った次第です。

 

孫子 (講談社学術文庫)

孫子 (講談社学術文庫)

 

 

 

孫子とは

 さて。記念すべき最初の本はズバリ『孫子』。孫子は紀元前500年頃の中国で著された兵法書で、今もなお多くの人に読み継がれています。特徴は戦争行為全体を論理的に説いた点にあり、作戦の是非を占いの吉兆に頼っていた従来の兵法と大きくかけ離れた内容となっています。

 また20世紀半ばから本書内の記述をビジネスの分野で応用しようとする動きが盛んになり、解説書も数多く出版されています。某経済紙『大統領』では必ずと言っていいほど、ビジネスマン必携書の一角に名前が挙げられています。

 

 とはいえ。あなたは実際に孫子を手に取って読み通した事がありますか?私は入社当初に憧れていた先輩に感銘を受けて読みましたが、正直それほど多くのビジネスマンが読んでいるとは思えません(大多数が読んだ上でこの有り様だというのなら世も末)。

 耳にはするけどとっつきにくい孫子のエッセンスを簡単明快に摂取していただこうというわけです。

 

 それでは前置きが長くなりましたが、本文へどうぞ。

 

計編

兵とは国の大事なり

 

 言うまでもありませんが戦争をすることは国を挙げての一大事。前線で戦う兵士だけでなく国民の協力や経済的地盤、実際に戦場となる現地の情勢、前線から本営に至る各指揮者、そして物事を指示通りに進行させる規律など様々な要素が求められます。

 そしてこれらを冷静に、数量的に、客観的に計測した上で慎重な判断を積み重ねる。こうした地道な準備の積み重ねがあって、初めて戦端を切ることができるようになります。綿密な準備の上での戦争は始まる前から勝利が確定しており、不利と思われるのであれば全力で開戦を回避する努力をしなければなりません。

 

 ビジネスシーンでは事業の立上げや新商品の開発、その販売など競合他社と”戦争”になる場面は多くあります。これらは決して担当する部署や個人といった小さな単位の努力のみで成し遂げられるものではなく、企業としての総合力を結集した上での活動が必要不可欠となります。

 社員のやる気、世間のトレンド、ターゲット戦略、的確な上司の指示、目標達成への結束力があってこそビジネスは成功に至ることが可能となります。そしてこれらは単なる思い付きやアイデアだけでどうにかなるものではなく、完成イメージから逆算される様々な下準備が必要となります。

 ビジネスの大きなターニングポイントではこういった要素を十二分に考慮する必要があり、不透明な部分は徹底的に排除するかビジョン全体を見直す余地があります。

 

勢とは利に因りて権を制するなり

 

 いかに机上での作戦が完璧であっても、いざ戦闘が始まれば不測の事態や偶然はいくらでも起こり得ます。前項で挙げた5つの要素を基にした入念な準備に胡坐をかかず、本番でも常に集中して刻一刻と変化する状況を判断しなければなりません。

 前項では戦闘を始めるか否かの判断を、ここでは戦闘の最中での判断を求められますが、共通するのは冷静になって客観的に状況を見る能力です。自らの長所と短所を客観的に捉え、有利になるように調整する。指揮官には大局的な視野と指示を確実に実行させる統率力が必要なのです。

 

 企業で新商品を販売する場面を想定すると、商品が店頭に並ぶ時点を開戦と見ることができます。発売後は「在庫が大量に余るor不足する」「客層が狙い通りor想定外」「他社が後追いで類似品を発売」「(良くも悪くも)メディアに取り上げられる」等々、様々な事象が起こります。

 もちろん事前に対処法を練れていれば問題ありませんが、不測の事態に陥る可能性は潰しきれません。その際に冷静な対処を指示できるかどうかで経営者の器を測ることができます。決して運任せにせず、その時々の最善を尽くして成功を確実なものへと、少しずつ近づけていくことが求められます。

 

兵とは詭道なり

 

 戦況を判断するには味方と敵の状況を正確に見極めることが重要となります。即ち、自らの実態を誤魔化すことができれば、それだけで相手の状況判断を鈍らせる妨害効果を発揮するのです。

 自軍が有利な状況で優勢を見せつけると、敵はこちらを警戒し十分な対策を練ってくるでしょう。すると時間が経つほどに彼我の戦力差は縮まり、いずれ状況を覆されることにもなりかねません。自軍が不利な状況で劣勢をを悟られると、敵は今が好機と短期決戦を仕掛けてくるでしょう。しかし敢えて優勢を振る舞い敵を怖気づけられれば、その間に自軍を立て直して互角に渡り合う事ができます。

 戦争における最上の策とは正々堂々の一騎打ちではなく、こちらの有利な状況で確実な勝利を積み重ねること。そのためには敵を欺き、こちらの実情を悟らせないかが重要となります。

 

 商談で他社と競合になると顧客へのPR合戦が始まり、ここでは自社商品を選んだ方が他社商品を選ぶよりも満足度が大きい事をアピールすることとなります。もし他社商品の価格や納期、評判、長所・短所等を完璧に把握していれば余程商品が劣っていない限りは商談に勝つことができます。これは相手にとっても同様で、こちらの実情を全て把握されていると自社商品の弱点との差を集中的に突いて顧客の心を奪われてしまいます。

 これを避けるためにはまず自社商品の弱点を悟られない事。こちらの知られると困る点に目を向けさせず、あくまで同じ土俵での勝負に持ち込むことが第一です(但し極端な偽装は許されません)。次に自社商品の長所も上手に隠す事。こちらの方が価格が安いことを悟られなければ、安易に価格勝負へ出てきた他社を返り討ちにすることができます。

 商品力が圧倒的に優位であればそれに越したことはありませんが、様々な要素を考慮すると甲乙つけがたいという場合が殆どでしょう。そんな時は両者の長所・短所を冷静に判断して顧客の心を掴むことを心がけましょう。

 

算多きは勝ち算少なきは敗る

 

 開戦の火蓋が切って落とされる瞬間まで、指揮官は何度もシミュレーションを行います。事前準備が十分であればこの時点で勝利が見込めますが、もし敗色濃厚であれば準備が不十分なので戦闘に突入してはいけません。彼我の戦力差を神頼みや根性で埋めようとするのは最早作戦とは呼べず、国家全体の行く末を預かる指揮官としては失格です。

 

 ビジネスにおいて前線の個々人が神頼み運頼みで動くのは仕方ないとしても、責任を持つ上司や経営者も同じ考えではいけません。大きなプロジェクトを動かす際には入念な準備を怠らず、時には早めに撤退することも視野に入れる必要があります。運が悪くて失敗することは想定していても、運が良くて成功することをあてにしてはいけません。人事を尽くして天命を引き寄せる努力が求められます。

  

終わりに

 以上、孫子の第一章 計編 をご覧いただきました。本当は第二章の作戦編までまとめるつもりが、書いている内に熱が入ってしまい分割することにしました。散々説いていた計画性はどこにいった!

 

 ツイートは本文読んでまとめて10分で投稿できるのに対して、この記事はその数倍の時間をかけて執筆しています。今のペースだと週に1回はまとめないとどんどん在庫がたまってしまいます。自分が自分にプレッシャーをかけられている……。

 

 弱音はさておき、今後も無理のないペースでまとめていきます。至らぬ点が多々ありますので気になった点はご指摘いただけると大変ありがたいです。 

 

それでは次回も、なにとぞよしなに

孫子 (講談社学術文庫)

孫子 (講談社学術文庫)