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ブラック・テラー / 三堂マツリ 第10話(最終回) 感想・紹介記事

 2018年発表作品で(個人的に)最も面白い『ブラック・テラー』(三堂マツリ:著)の各話感想・紹介記事(ネタバレ含む)を書いていきます。

 短いページ数の中で繰り広げられる絵本のようなファンタジックな絵柄と、あなたの予想を裏切るスリリングな展開が織りなす極上のショートストーリーを是非ともお楽しみください。

 

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紹介

 

 身だしなみを整えた一人の男。いつか蜘蛛を連れていた謎の男。

 彼はメイドに声をかけながら玄関を開ける。

 「行って来る マリィゴールド」

 「いってらっしゃいませ 旦那様」

 落ち着き払った態度でメイド・マリィは主人を見送った。

 

 大きな満月が浮かぶクリーピー・サイドを男が往く。

 今夜は金曜日、街の映画館ではフライデーナイトと称したイベントが行われている。

 受付に立つのは金曜日の出勤を欠かさない青年。

 チケットを買い求めるのは一人の女性。彼女の服はパッチワークで出来ている。

 「けどやっぱり変かしら 夜中にひとりで映画なんて・・・」

 「そういう方は意外と多いですよ」「それに」「こちらとしても有り難いお客様です」

 

 謎の男が夜道を歩く。

 彼とすれ違った若い男が公園に佇む青年へ声をかける。

 「良い靴を履いているね」「良ければどこかで・・・」

 その声に振り向いた青年は顔に大きな縫い跡があった。若い男はたじろぎその場を後にする。

 「あー ヤダヤダ みんな この反応」「早く次のハロウィンにならないかな・・・」

 残された青年はぼやきながら目の前にある【何かが欠けたオブジェ】を見つめる。

 

 謎の男は通りを抜ける。

 肩にネズミを乗せた郵便局員に少女が話しかける。彼女はネズミに尻尾が無い事に気付き、局員にこう伝える。

 「大丈夫・・・きっとこの子長生きするよ」「死の匂いが全然しないもの・・・」

 局員は少女の言葉を怪訝に思いながらも、嬉しそうにネズミに話しかける。

 「だそうだ 良かったなソクラテス

 

 謎の男は住宅街にさしかかる。

 ある家の玄関では歯ブラシ売りが主人に食い下がっていた。

 つい最近までホームレスだった彼は恋人とのデートの為に必死になっていた。そんな彼に見かねて主人は一つ条件を出した。

 「写真を撮らせろ そしたら買ってやってもいい」

 困惑する歯ブラシ売りの前で、突如主人はチェーンソーを振り回し始めた。そして。

 「はい チーズ!!」

 

 謎の男がふらふらと。

 警官と少女が買い物袋を抱えながら歩いている。2人は買い出しのメモをチェックしていた。

 謎の男とすれ違おうとした時、警官は買い物袋を少女・チェルシーに渡し、彼に敬礼した。

 「お疲れ様であります!」

 「! ああ ジェシー巡査か」

 「どうだ? 街の様子は」

 「えー・・・ はい! それはもう平和そのもので・・・」

 「本当は?」

 「ええ・・・何と言いますか・・・」「少々癖のある住民が多くてですね・・・」

 ジェシーの言葉を聞いた男はとても上機嫌になった。夜道を気を付けるようにと言い残して立ち去る後姿にジェシーも別れの挨拶をする。

 

 「はい 町長もお気をつけて」

 

 

 手すりにもたれて町長が佇む。

 その肩に一匹の蜘蛛が飛び乗った。彼女は街を歩き回り、様々な奇妙な物語の目撃者となり、そして今帰ってきたのであった。

 しかし帰ってきたのも束の間、蜘蛛はすぐに肩から飛び降り再び街へ繰り出した。

 

 彼女は凶気を求める蜘蛛。彼女に休む暇はない。

 蜘蛛を見送る町長は高台から街を見下ろす。その街並みはまるで蜘蛛の巣のような。

 

 そう ここはクリーピー・サイド 不気味と隣り合わせの街

 

感想

 ついに最終話となりました。早い!早すぎる!クリーピーサイドの奇妙な住人達ともっと触れ合いたかった…

 

 さて、ラストは総集編のような仕上がりになりました。改めて各回の登場人物達が勢揃いすると、いかに世間が狭いのかと思わされます。あるいは、この街の濃度が高いと言うべきか。杜王町並みの引合せっぷりです。

 

 以前の感想記事では2つ、要望というか予想というかを挙げました。

・謎の男(町長)の再登場

・登場人物同士の交流

この2つが同時に叶った形となります。

 

 町長はあくまで傍観者の立場に徹することになりました。実は町長がクリーピー・サイドに狂気を促す霧をばら撒いてる、といった陰謀説も考えていたのですが。

 とはいえ人為的な作用が加わっていないとすると、住人達のナチュラルボーンなヤバさが際立っている気もしてベネですね。

 

 そう言えばこの作品のキーワードは「狂気」「不気味」といったものですが、「悲劇」ではないんですよね。

 一般的な常識や倫理観から外れた人物だらけではありますが、そこから生まれたハッピーエンドもたくさんありました。

 

 誰もが"個性"という名の狂気を抱えていて、それを自由に発露させてくれるのがこのクリーピー・サイドなのではないか。

 それは時に拒絶され、時に許容される。だが自分らしくあろうとする事は誰にも止められない。

 そんな抑圧されない自由な気風を愛でるのが町長の楽しみなのではないでしょうか。

 

 

終わりに

 これにて『ブラック・テラー』の感想記事は一区切りとなります。まだまだ作品理解が浅いので、他の方の感想なども読みながら何度も味わっていきたいと思います。

 

 また三堂先生は現在、次回作についても構想中のようなのでとても楽しみです。新連載が始まりましたらまた記事にさせて頂こうと考えております。

 

それでは次回も、なにとぞよしなに。 

ブラック・テラー (バンブーコミックス タタン)

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