今日紹介するのは私のデスクの相棒。キャップレス万年筆デシモとインク色彩雫(イロシズク)/深海です。
綺麗なインクを気取らず使えるデシモはビジネスマン向け万年筆のベストアンサーと言えるでしょう。
私の文房具
PILOT インク 色彩雫 深海(shinkai)
時は大学卒業直前まで遡ります。
なんとか就職先が決まった私は4月に向けて仕事用の備品を揃えていました。とはいえそれ程意気込んでいた訳ではなく、高校入学から大学卒業まで使い続けていたシャーペンやボールペンを買い換えようという位の気分。
そんな具合でボンヤリと店内を歩き回っていた私の目に飛び込んだのは、とても美しいガラスの瓶。よく見るとそれは万年筆のインク瓶でした。
そう、何を隠そう!私が万年筆を使い始めるきっかけはインクに一目惚れしたからなのだ!
当時は今のようにクラシックスタイルに傾倒していなかったので、「スーツには万年筆だよね」などという小賢しい考えは持ち合わせていません。
そんな私をノックアウトしたのがこちらのインク瓶。
色雫 深海 pic.twitter.com/sSJpP7Bz3O
— 一騎 (@aerodyne0739) 2019年2月19日
万年筆のインクは文房具メーカーがそれぞれ独自のものを開発しています。なぜならインクはそれぞれ成分の配合が異なる為、色合いだけでなく書きやすさや乾き具合などメーカーによって嗜好が異なるからです。
例えると革靴のクリームが同じ黒でもメーカー毎に異なるように。え、わかりづらい?
じゃあポテトチップスのうすしお味がメーカー毎に違うように。はい、とてもわかりやすい!
このようにインクはメーカーがそれぞれに販売しているのですが、基本的には色を表すシンプルな名称が多い。にもかかわらず、それを覆すのがパイロットの色彩雫シリーズ。
直接的な色名を用いず、色から受けるインスピレーションをタイトルに使うのは、さながら俳句が四季を季語によって表すかのような趣き("神戸インク"などイメージを名前にするインクは他にもあります)。
私が手に取ったのはブルーブラック系統の"深海"。普段私たちが使うボールペンは黒インクが基本ですが、古典的な万年筆用インクは紺色に近いブルーブラックが基本とされています。
ちなみに。深海以外にも"月夜"や"紺碧"、"朝顔"なども迷いました。どれも絶妙な色出しがあり捨て難い!深海が終わってからの楽しみに取ってあります。
そんなこんなでインクを選んだ私を待ち受けていたのは、その主となる万年筆選びでした。
PILOT キャップレス Decimo
インクへの一目惚れから万年筆を買わざるを得なくなった私を待ち受けていたのは、重厚感ある万年筆の数々。しかし本格的な万年筆は、それはもう、雰囲気が強すぎます。新入社員が使うには不似合いが過ぎる。
さらに。先ほどインクはメーカー毎に特徴が異なると書きましたが、その違いの一つに"粘度"があります。インクの粘度は書き味に影響し、低いとサラサラ、高いとヌメヌメとした触感になります。この辺は詳しくないので省きますが、メーカーはインクと万年筆の特性を近づけています。
要するに、サラサラ志向の万年筆本体にヌメヌメのインクを入れると詰まりやすくなるということ。逆の場合はインクが溢れて字が滲みやすくなる。これを避けるにはメーカーを揃えるのが最もハズレのない選択肢。
というわけで万年筆本体は同じPILOTからチョイス。さすが一流文房具メーカーPILOT、万年筆入門向け"カクノ"から高級万年筆シリーズ"蒔絵"まで選り取り見取り。
そんな中で私の目を引いたのは一見ボールペンのような"キャップレス デシモ"。
PILOT キャップレス Decimo pic.twitter.com/xHNfeUlDlB
— 一騎 (@aerodyne0739) 2019年2月19日
パイロット 万年筆 キャップレスデシモ FCT15SRPWF 細字 パールホワイト
- 出版社/メーカー: パイロットコーポレーション
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「万年筆でノック式なんて珍しいな」と思ったのですが、それもそのはず。ノック式の万年筆は世界でPILOTしか販売していません(少なくとも私の知る限り)。万年筆はインクが乾きやすいので密閉性の高い回転式キャップを採用するのが主流。その為、通気性の良いノック式はすぐにインクが乾いてしまい万年筆には不向きでした。
しかし独自の機構によって弱点を克服したのがキャップレスシリーズで、ワンタッチで使い勝手の良い万年筆に仕上がりました。ノック式なので使いたい時に瞬時に書くことが可能な上、キャップが無いので紛失の心配もありません。
さらに見た目がスタイリッシュで万年筆特有の重厚感がなく、カジュアルで気軽に万年筆の書き味とインクの色を楽しむことができます。
よって、実用万年筆としてキャップレス デシモは一つの到達点へと辿り着いたといって過言ではありません。タイミングがあれば高級万年筆に挑戦したいと考えてはいますが、この唯一無二のキャップレスは手放せないと確信しています。
終わりに
今回は私が愛用する万年筆とインクのセットを紹介しました。
モンブランやウォーターマンといった本格万年筆を使う方々から見れば邪道と映るかもしれませんが、初心者が手を出すのなら間違いなくキャップレスシリーズがオススメです。
高級品はそれなりの値段がするので、もし万年筆の良さを感じられなければ持ち腐れになってしまいます。であればキャップレスで”万年筆そのもの”に親しみを感じ、その上で本格万年筆を手にした方が人にも道具にも良い未来が待っていると思います。
とはいえキャップレスは下位互換ではなく、もはや亜種として確立されているのでこれからも根強いファンを生み出していくことでしょう。
余談ですが。万年筆、というより上等な道具を手に入れたことで紙に何かを書くことが楽しくなりました。それで特段仕事ができるようになったという実感はありませんが、手先を動かすのは脳の体操にもなるので良い事かなと。
それでは次回も、なにとぞよしなに